レスポンシブ広告




R3Magazine-Web アルバム作品レビュー レビュー

「ゆかいあとは…」を追求した星々の軌跡。ハガネノウサギゴヤ / 惑星軌道

投稿日:

惑星軌道とは?

VOCALOID「結月ゆかり」と「IA」の二人のカップル(「デュエット」でもいいがキャラクターと関係性、コンピレーションのテーマ性を考えるとこのほうが良い)である、所謂「ゆかいあ」をテーマにした、コンピレーションアルバム。リリースはKAI氏が主催するサークル「ハガネノウサギゴヤ」より。各参加者も、ゆかいあが歌っている曲を投稿していることで、よく知られるメンバーである。

中でも、Nia氏、はてぃ~氏、van=jin(遅刻オトメンP)氏、KAI氏は、同じくゆかいあをテーマにしたコンピ『sync-loid:07』に参加していたし、Nyxiluca(アカツキヒトシ)氏は、こちらも同じくゆかいあコンピである『MARGARET』に参加していた。

ともかく「ゆかいあ」と聴けばテーマ的にも、そして楽曲制作の実力でも納得の面子があつまった今作であり、リリース前から楽しみにしていた作品である。蓋をあけてみれば、期待以上の出来上がりであった。安心して聴ける安定感と、溢れるゆかいあへの愛が詰まっている。

TrackList

1.マケモノループ
2.ゲームをしよう!
3.Freesia
4.Seven Waves
5.Memorial Fantasy
6.Sole
7.Love forever
8.春の風に包まれて
9.TRUST DISTANCE
10.N.X.T.
11.Shining ray
12.3.8cm/y
13.星彩イルミネイター

各楽曲レビュー

1.ねじ式 / マケモノループ
愉快痛烈な爽快感あるロック。暴れるようなギターとピアノが、ワチャワチャ賑やかに、ガーッと駆け抜ける。ピアノとバンドサウンドが激しく跳ね回り、シンセがピリピリとすると、全体的に音がパリッとしてかっこよく、疾走感がでる。

2.ギャル子 / ゲームをしよう!
いわゆる脱力系の日常系チップチューン。ほんわかする日常の一コマを淡々と控えめに、少し遠目から眺めているかのうよう。少し間延びして飽きがくるところがあるので、もう少し跳ねたところがあると良かったかもしれない。出てくるゲームは元ネタがあるもので、それがわかるとニヤリとできる。

3.来栖遥希 / Freesia
曲全体を一言で言うならば、揺蕩う浮遊感。全体的にまったりとした、落ち着きと心地よい脱力感がある。空をゆったりと流れていく雲や、無重力の宙をふわふわと漂うような感じが、実に心地よい。それから、高域でのデュエットのハーモニー。それが一切の不純物なく、透明に響いて潔くスッっと消える美しさ。

4.Nia / Seven Waves

少し懐かしさ感じる、ダンスミュージック。"Freesia"の落ち着いた雰囲気のあとに、スパークするように、弾ける音の強さ。ビリビリブリブリとした、やや攻撃的なクラブサウンド。重くもないが、軽くもない。音としては十分以上であるのだが、曲全体がなんとなく薄く感じる。

5.はてぃ~ / Memorial Fantasy
しっとりと歌う歌声が美しく、また深く染み込む。メロディアスな歌謡系のバラード。儚げにすっと潔く伸びる歌声が美しくて気持ちが良い。結月ゆかりとIAの、繊細だけれどもしっかりと膨らむ声の美しさが一番よくでている。

6.CloA / Sole

もっとも鋭く、エッジの効いた音がする。刺さるというか、激しく求めるように刻みつける音が、アダルティックで盲目な夜の曲。スローテンポでダークなFutureHouse。昇りつめては、白に溶けゆく意識のような音の隙間。軽いけど響く音の一つ一つが、どこかぬるりぬるりとしている。

7.夕立P / Love forever

夜のネオンのような官能的で艷やかな曲。そういう意味では前の曲と方向性は一緒だが、ベタベタとしつこい感じではなく、なめらかにさらさらとした落ち着きのある煌めきを感じる。音も歌詞もストレートであるのと、おしゃれでサバサバとしたスキャットが、またさっぱりさを強めている。

8.Van=jin / 春の風に包まれて
最初は学校のチャイムから始まり、曲の中にもそのチャイムのベルの音が何度も使われている。青春のやわらかで青々とした、春の風薫る元気で楽しい楽曲。このコンピレーションの中では、やや硬い印象。IAの声が緊張感ある高めなのだが、その分すこしトゲトゲしいところがある。曲の展開にあわせて、そういう柔らかさや硬さが欲しかった。

9.grief art / TRUST DISTANCE

さわやかでキラキラとしたダンスポップ。grief art氏の曲では、あまり聴いたことがない部類なので珍しい。丁寧につくられた音に、ストレートな歌詞。楽しそうに廻り廻る二人を想像すると、こちらまで嬉しくなってくる。この星空の下に二人、月と地球のように廻り廻る。なんだか心がくすぐったくなるような、そんな曲。

10.将 / N.X.T.

不確かな未来への旅路を、凛々しく力強く前を向いて歩いていゆくプログレッシブ・メタル。力強いサウンドと歌詞に、気分が高揚していく。「ただ遠回りしてただけ」と、夢を見失いかけても再び鮮やかに蘇る、その眩しい輝きにあふれている。次の"Shining ray"もそうだが、ギターがやはり強い。

11.池本 / Shining ray
ハイテンポなシンフォニック・メタルだが、プログレの要素も。『N.X.T.』と同じくエモーショナルギターの強さ。ギュンギュンとした音が体を貫くように力強くも、粗雑さは皆無。このコンピの中でも、前曲とこの続く二曲は特に聴き応えがあり、(他の曲も豪華ではあるが)メタルが苦手でも是が非でも聴くべき。

また、『N.X.T.』の将氏とこちらの池本(イケモト)氏は、楽曲制作サークル「Farthest」のメンバー。バンド活動もしており、両者・両曲ともエモーショナルなギターが(繰り返しになるが)強い。すでに『Crystality』と『雷鳴』の2つのEPをリリースしており、ボカロPとしては新参とはなるが、すでに実力は頭一つ抜けていると言って良い。

12.Nyxiluca / 3.8cm/y
悲しくも美しい涙のようなメロディーは、唐突に訪れた別れの歌。切なく響いて消えるピアノに、繊細な結月ゆかりとIAの歌唱。あの月のように、貴方のことも、貴方との日々のことも、静かに少しずつ遠ざかっていく…。その悲しみが深く魂の奥へと染み込んで、そしてその何事にも代えがたい美しさに心打たれる。

13.KAI / 星彩イルミネイター

どこまでもまっすぐに、天高く、光は眩しく降り注ぐ。太陽と月は、この暗く深い闇の冥を祓う天使を遣わさん。壮大なスケールに、"ゆかいあ"という星の輝きを歌うアルバムのラストにふさわしいロックサウンド。今までの軌跡がここに結実した一曲であり、求め合う結月ゆかりとIAという二人の存在が織りなす運命の光である。

まとめ

テーマが結月ゆかりとIAの「ゆかいあ」であるので、マニアックといえばマニアなコンピレーションだ。結月ゆかりとIAというキャラクターへの知識や文脈への理解があれば、より楽しめるのは当然ではある。しかしながら、収録されている曲はそれぞれ実力派揃いであり、ゆかいあの魅力だけではなく(それが重要ではあるのだが)、それぞれの楽曲の魅力も十分に味わって欲しいし、それができる一枚になっている。

ArtWork:夏目チョコ(jacket), 愛我みちる(Announcement)
Mastering:かごめP
Total Design & Organize:KAI

関連リンク

【声月肆】惑星軌道【クロスフェードデモ】

DISCOGRAPHY(サークル『ハガネノウサギゴヤ』へ)
BUY(とらのあな通販サイト)
ありえん尊みが深いボカロのカプ「ゆかいあ」について本気を出してみたらヤバかった(参加者、夕立Pによるレビュー記事。よりどりみどりの音楽カルチャーサイト『出前寿司Records』へ)

文責:STERN(@star_ac_jp)

Pick up!!

14,054view

まぁ要するにただのまとめ記事です、ただネット上に情報がバラバラになっていると、それはそれで見辛いものがあるのでここらで一 ...

2,130view

著:Ark of Phantasm代表 Winna Strive(@Winna_Strive) イラスト:砂灯(@sat ...

730view

今更ですが、オフレポみたいなものです。こんにちは、主催のタチやん(@mofday)です。 第25回文学フリマ東京に、サー ...

-R3Magazine-Web, アルバム作品レビュー, レビュー
-, , , , ,

Copyright© 同人音楽レビュー・エンターテイメント企画『R3Magazine』 , 2018 All Rights Reserved.