レスポンシブ広告




R3Magazine-Web コラム

自分の作品を誰かの元に届けるために

更新日:

著:Ark of Phantasm代表 Winna Strive(@Winna_Strive) イラスト:砂灯(@satou310)

【概要】

同人界隈に身を置く以上、多かれ少なかれ「自分の作品を手に取って欲しい」と感じるのは必然。同人創作の世界が時代と共に刻々と表情を変えていても、おそらくこの原点とも言える思いはそうそう変わるものではないだろう。作り手、出展者の「手に取って欲しい、聞いてほしい」という思いと、一般参加者、リスナーの「欲しい、聞きたい」という思いを同時に成就させる事が出来たなら、それは純粋に嬉しい話ではないだろうか。

本稿では「収益性やマーケティングの話を一切抜きにして」という大前提のもとに、自分の作品を、特にそれを欲しいと感じている誰かの元に届けるためのアプローチについて考察していく。

※直接的に販売数を改善するための内容ではなく、数多の考え方の中の一つとして楽しむ記事です。また、創作やイベント出展のノウハウを感覚に頼るタイプのクリエイターには全く参考にならない内容かもしれません。あくまでも「よく分からないけど、何故か上手くいかない現状を何とかするヒントを得たい」という方向けの内容となります。

1.はじめに

同人活動歴を聞かれて「長いですね」という反応が返ってくるようになって久しいが、実際に年数を重ねる過程で同人関係の知り合いは着実に増え、同人界隈における参加者の変遷もおぼろげながら見えてくるようになってきている。同人音楽の世界を見渡してみると、かつては「作りたいものを作りたいように作る。興味を持った人だけ買えばいい。」というスタンスを貫き、これといった宣伝や呼び込みもせずに黙ってブースを構えるという光景は珍しくなかったが、そういった考え方はイベント参加を重ねるごとに明らかに少数派になっているのを感じるのである。


Fig.1 全サークルに当てはまるわけではないが・・・

ジャンルにも依るので一概には言えないが、ロック・メタル系やクラブミュージック界隈では、普段ライブを中心に活動している方が同人即売会をCDやグッズの頒布の機会として扱うのを見かける事がずいぶん増えたという印象がある。また、従来の同人活動と同じスタンスでイベントに参加している場合でも、動画サイトや音楽系SNSの普及により、質の高い宣伝手法が確立されているという背景に加え、全体的な若年齢化やイベント自体の規模の肥大化といった要因が同人即売会の位置付けに大きな変化を与えるきっかけになっているのは間違いないと感じている。

同人サークルの母体数が増えているのに加えてイベント当日以外に潤沢に情報が得られるようになったことで、購入目的で参加する側としては十分な事前調査による「厳選」や予算のマネージメントがどうしても必要になってくるようになった。コミケやM3等、出展者の母体数が多くジャンルの幅も広いイベントでは特にその傾向が強いが、この事前調査で残念ながら候補から漏れてしまったサークルは見向きもされずに終わるという事も珍しい話ではない。


Fig.2 必死の呼び込みも虚しく完全スルーもあり得る

もっとも、こういった厳選自体は今も昔もあるのだが、出展者としての事前準備がより多く求められるという流れが年々強くなっているのは実際に毎年イベントに顔を出す毎に肌身で感じられるのである。

2.自分の創作スタイルは何か

ある意味いきなり本質に触れていくのだが、これは言い換えるなら「あなたのモチベーションは何か」という話に直結する。実はモチベーション自体は必ずしも重要であるとは限らないのだが、多くの作家は無視するわけにもいかない要素となる可能性が高い。何故なら、ここで作品の「見せ方(魅せ方)」「宣伝のしかた」「ブースのセッティングのしかた」「登録ジャンル」「当日の呼び込み方」「参加するイベント」に至るまで、かなりの要素が決まってしまう可能性があるからだ。


Fig.3 何か軸が1本通っていると整理しやすい

「○○というジャンルが好き」「○○という原作(あるいは作家)が好き」「○○という世界観が好き(表現したい)」「作るものは何でもいい。注目されたい、褒められたい。」など、挙げていけばキリが無いのだが、無から何かを作り出すという行為には、必ずモチベーションとなる何かが存在する。もし自身のスタイルを聞かれて即答できないようなら、これを機に整理してみるのも悪くないだろう。後述するが、これが即答できる、できないという話が良い、悪いという話に繋がるかというと、そうではないのでご留意いただきたい。

ちなみに良い機会なので、ここで私は「ただ褒められたいから作るだけだ。誰でもいいから私の曲を聞いて褒めておくれ!」という極端な考え方には比較的肯定的である事を先に述べておく。人間というのは褒められると嬉しい生き物だというのは、不偏的な事実だと考えているからだ。

3.「どんな曲作ってるんですか?」に答えられるか

実は、前述した話はここに繋がってくる。「○○系の曲です」「○○をリスペクトした曲です」「○○という世界観を表現してます」「特に方向性を定めずに色々作ってますよ」といったように、様々な回答があるだろう。

創作スタイル同様、ここにスムーズに返答できるかどうかが良い、悪いという話ではないのだが、例えばイベントでは「ジャンルコード(要は自身の曲ジャンルが何か)」というものが存在し、似たような音楽ジャンルのサークルが近くに密集しやすくなる。また、SNS上で知り合いを辿る際、似たようなジャンルを手掛ける作家のアカウントを渡り歩くという流れは、作り手か聞き手かに関わらず、心当たりがあるのではないだろうか。

万人に当てはまる話ではないので恐縮ではあるが、自身のスタイルが固まっていない場合、ここでの返答がスムーズにいかない事も多い印象を受ける。ここが定まっていないのが原因で「見せ方」を失敗してしまったり、イベント参加時に親和性が低いエリアにブースが配置されてしまったりするリスクは、やはり防げるなら防ぐに越したことはない。


Fig.4 こんなに極端な例は滅多に見ないけどね

4.即売会をどう位置付けるか

はじめに述べたように、昨今の同人即売会の中でもコミケやM3といった大規模のものになると、多くの一般参加者、聞き手はイベント会場に入る時点で、かなりの割合で目的が固まっている印象を受ける。実際、イベントに出展している知り合いの声を聞いていても「CDを手に取って下さる方の多くは事前調査済みのケースが多い」という。このパターンだと、即売会は「購入窓口」という位置付けになるだろう。

では、昔ながらの「フラッと遊びに来て未知の音楽、未知のサークルを発掘する」という目的の参加者が居なくなったのかというと、答えは明らかにNOである。確かに数は減ったが、そういった一般参加者は常に一定数存在しており、意外なご縁があったりするのである。そして、そういった参加者の目に留まるかどうかを左右する要素には、見せ方や呼び込み方が含まれてくる。

ここで当然のように課題として出てくるのは、どう見せればいいのか、どう呼び込めばいいのか、という根本的な話になってくる。(※呼び込みにのポイントについては、R3Magazine公式サイトにもトロワル氏(@torowaru)による「5分で劇的に変わる同人即売会の呼び込み」というコラムが投稿されている。とても共感できる内容なので、本稿読者には是非オススメしておきたい。)

「5分で劇的に変わる同人即売会の呼び込み」

初めまして、トロワル(@torowaru)です。 まもなく「音系・メディアミックス同人即売会」M3が開催されますね。今回 ...

続きを見る

5.需要と供給の多様性

少々唐突だが、こんな経験は無いだろうか。試聴して下さった方に「このCD、ボーカル曲は無いんですか?」「これ、生音ですか?打ち込みですか?」という素朴な問いかけを受ける。シンプルな問いかけだが、この問いに対する回答の次に返ってくるリアクションで、嬉しくなったり残念な気分になったという方は多いのではないだろうか。

作り手が多種多様なのと同じように、聞き手も多種多様で、中には「曲は好きだが打ち込みの音が苦手」という理由で購入をやめるというケースも珍しくない。(無論、「逆に打ち込みの音が同人っぽくて好き」という方もいらっしゃる。)


Fig.5 このやり取り、毎回必ず1回はある。

たまたま需要と供給が一致したりしなかったり、というのがイベント会場の大前提なので、こういった話は運良く(悪く)当たってもあまり深く考えず、自身が作りたいものを胸を張って作る事を個人的に推奨したい。(自身にとって「改善点」「方向性の模索のヒント」として受け取る事ができるなら、もちろん新たな挑戦に繋げていくのも重要である。)

6.誰に見つけて欲しいのか

大変長くなったが、ここまでが諸々の「前提」となる。具体的なアプローチに触れる前に、これまでの基本要素が整理できている事を確認しておきたい。

  • なぜ曲を作る?
  • どんな曲を作る?何を表現したい?
  • それを、どんな人に聞いてほしい?

本項の主題となる「どうすれば作品を手に取ってもらえる?」を考える際に、上記3つが整理出来ているか、出来ていないかの差は大きい。特に、事前調査など一切無しでその場で興味を持ってくれたリスナーさんに目を向ける場合は尚更。

実は具体的なアプローチを考える段階になると、前提条件という部分については非常に多岐に渡るため、いわゆる「一般論」というのもは全く通用しなくなる。ここから先の話では、過去に実際に見聞きしたケースを元に考察を行った事で見えてきた話を元に、即実践可能なポイントというものについて述べていくことにする。

NEXT:どうやって見つけてもらおうか?

次のページへ >

Pick up!!

11,941view

まぁ要するにただのまとめ記事です、ただネット上に情報がバラバラになっていると、それはそれで見辛いものがあるのでここらで一 ...

1,771view

著:Ark of Phantasm代表 Winna Strive(@Winna_Strive) イラスト:砂灯(@sat ...

671view

今更ですが、オフレポみたいなものです。こんにちは、主催のタチやん(@mofday)です。 第25回文学フリマ東京に、サー ...

-R3Magazine-Web, コラム
-, , , ,

Copyright© 同人音楽レビュー・エンターテイメント企画『R3Magazine』 , 2018 All Rights Reserved.