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R3Magazine-Web コラム

感想の経済学

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「感想が何よりの糧です、だから感想を送ってあげましょう」という意見をSNSで散見します。事実その通りであることは、これをお読みの同人作家のあなたであればよく理解できることかと思います。
しかし、ここで一つ疑問です。感想を"送ってあげましょう"、という呼びかけ、なんだか違和感を覚えませんか?

ミクロ経済学(※1)風に考えてみる

経済において、市場は常に需要と供給によって成り立っています。財市場(※2)とみなせる即売会も例外ではない気がするので、この観点から考えてみます。
まず、ここで言う「財」は作品ですね。しかし、その価格は500円か1,000円の場合がほとんど、かつ「制作費の回収」程度が目的なので、購入されること自体は需要のモノサシですが、その「付加価値」が頒布価格から見るとほぼ0であると言えそうです。
しかし作品は購入されます。では、買い手は一体作品に対してどのように「付加価値」を支払っているのでしょう。

「感想」で成立する経営

少々荒唐無稽なのを覚悟で述べますと、それは「感想」なり「承認」による支払いではないかと考えます。
まず、実際の頒価は示し合わせたみたいに500円か1,000円じゃないですか。となると、前述のように価格自体は大した意味を持たないように見えます。
供給に対して需要が少ないと会社はつぶれてしまいます。しかし、同人サークルに破産はありませんので、理論上いつまでも続くはずです。それでありながら、「続けられなくなった」という理由で消滅するサークルがたしかに存在しています。これはなぜでしょう。
そこで出て来るのが「モチベーションが尽きた」という理由です。
人間は欲で行動する生き物です。「お金が本質ではない」と仮定するならば、金銭の欲求や所有欲求ではなく、即売会やSNSのつながりを中心とした「承認欲求」で運転されるのが同人サークルであると考えられます。そして、それをむりやり解釈するならば、「付加価値として感想・承認を受け取ることで、モチベーションを資本にして同人サークルの経営ができる」と言えるのではないでしょうか。

感想が来ない=需要がない

そう考えると、最初の問いの「違和感」はなんとなく理解できるはずです。なぜならば、「あげましょう」という促しが相手の意志や利益を無視しているからです。
前述の通り、即売会にも需要と供給が必ずあるはずで、かつお金ではなく感想や承認が貨幣として機能するならば、需要と供給によって決定するのは「価格」ではなく「感想や承認、評価の数」であるはずです。従いまして、「送ってあげましょう」というのは、貨幣で置き換えるならば「買ってやってよ」です。しかし、理解できますね。「要らんもんは買わん」し「送る気ないもんは送らない」のです。
「感想・承認」を貨幣と見なすと、「作品を頒布する(供給)」に対して「感想や承認がくる(需要がある)」が成り立つはずです。それがないということは残念ながら「需要がない」可能性がある、ということです。
そして需要がない、つまり売れないモノを作っている会社が破産するように、全く感想・承認が来なかったサークルは、運転資金(=モチベ)が底をついて、破産(解散)という憂き目に合ってしまう……ということではないでしょうか。「どうでもいい」と思われていたら需要がなく(感想が来なく)、「あってほしい」と思われていたら需要が発生する(感想が来る)という感じです。残酷ですが、人間の態度は正直です。

では、どうすれば?

ピコ手の方にとって冷酷な論理を展開したところで、「どうすりゃいいんだよ!」という話を少々。
これまでの話は経済学の真似事なので、単に法則性を見出すだけの話になっています。実は、もっと本質的なところである「買ってもらう・感想を言ってもらう方法」が抜けています。そこをおさえましょう。
お金をやりとりする市場経済の真似である以上、関連してくるのは「マーケティング」です。これは避けて通れません。「良いものを作る」は前提として、各種の枠組み(※3)にのっとった、認知から購買への導線設計が必要です。これができていないと需要がどうの以前にそもそも知られず、感想の送りようがありません。そして、興味を呼ぶ要素がマーケティングにより伝えられていないならば、「感想を送るというコストを支払う」なんてめんどうなことを買い手がやってくれるはずもありません。

「感想を送ってあげましょう」ではなく「感想が来ないという事実がある」というのを認識しましょう。
認知の導線は設計できていますか。売り方やブースの設計に問題はありませんか。SNSで騒ぐのを宣伝と勘違いしていませんか。
感想が来ないのは、感想が来ないなりの理由があるのです。じっくり考えてみましょう。作品に自身を持っているあなたなら、「モチベーション黒字経営」が必ずできるはずです。

※1 ミクロ経済学: 消費者や企業といった経済主体の最小単位に着目して、その市場を分析対象とする経済学の分野。
※2 財市場(goods market): 生産したモノやサービス(財)を取引する市場。他には労働力と賃金を取引する労働市場、貨幣をやりとりする貨幣市場がある。
※3 マーケティングフレームワークとして、AIDMAやAISAS、デュアルAISASなどの仕組みが広告業界から提唱されている。

文責:蟻坂 真己(@4risaka)

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