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R3Magazine-Web アルバム作品レビュー レビュー

遊星から来たりし"侵略者"を歓迎せり #ナユタン星からの物体X ナユタン星人 /『 ナユタン星からの物体X』(8曲盤・10曲盤)

更新日:

ナユタン星人氏の『ナユタン星からの物体X(以降、『物体X』)』は、以前一度レビューしたことがある。その時は、

「なんと1st アルバムを引っさげて、はるばる宇宙からナユタン星人がボーマスに降臨。アルバムの盤面の、この真っ白で触覚の生えた女の子(アンドロメダ子)の顔が2015 年のボカロシーンの顔である。スリムケースに入ってるのはレーベル印刷された円盤のみ。あらゆる飾りを取り払ったのは、このアルバムへの自信の現れだろう。」(※文脈上、以前のレビュー原文ではなく表現を修正してある)

このように触れたかと思う。

しかしながら、この6ヶ月後。入手困難だった円盤が、なんと追加で2曲を収録しての再生産。しかも、ガッチリとジャケット・フルカラーブックレットも追加とは夢にも思っていなかった。追加された2曲は、新たな書き下ろし「エクストリーム空中戦」と、学研の「ボカロで覚える中学理科」に提供した「アトミック恋心」。ジャケットは追加されたものの、こちらも青の背景にタイトルロゴとアンドロメダ子の顔のみと、ジャケットもレーベル面も以前と同等にシンプルに構成されている。

ナユタン星人といえば、2015年から現在に至るVOCALOIDシーンにおいて、もはや知らない者は誰もいない!と言っても過言ではない。この『物体X』は、デビュー作かつ、自身の代表曲「アンドロメダアンドロメダ」から、「パーフェクト生命」までの4曲を収録(8曲版リリースまで。後に10曲版のリリースまでに、残りの「ストラトステラ」「飛行少女」が追加で投稿されている。)し、堂々とした記念碑的1stアルバムに仕上がっている。

実際としては2015年7月のデビューから、11月の1stアルバムリリースはピッチが早いが、珍しいことではない。しかし、さらにそこから8ヶ月での電撃的全国流通は、快進撃と言える。

物理版はbooth・とらのあなに始まり、メロンブックス・アニメイト・タワーレコード・TSUTAYA・Amazon・ヴィレッジバンガード(2016年12月より)、さらにはダウンロード版がiTunes、amazon、Googleplay、mora、レコチョク(tunecoreによる全世界配信)とまさに全面展開であり、望めば物理でもダウンロードでも何処でも入手が可能という手に入れやすさである。また、ヴィレッジバンガードでは、缶バッチを始めとした限定グッズを展開するという力の入れようである。同社はここのところ以前よりもVOCALOIDに力を入れていると聴くが、この『物体X』が無関係とは言い切れないフシがある。

ヴィレッジバンガード ウェブページ
http://vvstore.jp/feature/detail/9661/

すくなくとも、このアルバム並びにナユタン星人の活躍(というよりは「侵略」)は、最近のVOCALOIDシーンだけではなく、今後のボカロシーンにも影響を与える存在と事象であり、そのシンプル性に始まり、アンドロメダ子という記号論などいかようの考察すべき点が多々存在する。少なくとも言えることは、『物体X』は2015年のボカロシーンを牽引を記録した一枚であるということだ。

1.アンドロメダアンドロメダ (コンタクト)

ナユタン星人のデビュー作かつ、2015年を象徴する代表曲。ニコニコ動画での動向も触れておくと、投稿から順調に再生数を伸ばし、4ヶ月もかからずに殿堂入りを果たし、今日現在では百万再生も射程圏内。今もなお、再生数の増加は投稿されて"初動が落ち着いてからのペース"を失っていない(月5万再生前後)。

投稿初動から、ライト層、リスナー層(いわゆる聴き専)だけではなく、ボカロP等から支持を受け、またたくまに再生数を伸ばした。老若男女に受け入れられるポップでキャッチーな曲でありながら、その音作りと歌詞、キャラクター性はありきたりな中毒曲とは一線を画した。

初音ミク曲でありながらミクの声にある強烈な個性を削ぎ落とし、「アンドロメダ子」という、白い女の子の宇宙人をが左右に踊る一見シュールな動画で、見るものに強烈なインパクトを与えた。この楽曲は、宇宙人と恋のファーストコンタクト(同時に我々にとってナユタン星人とのファーストコンタクト)を、完璧に演出し、今後も続くナユタン星人の侵略の第一歩となった。

一度耳にしたら忘れられない「アンドロメダアンドロメダ」「パルラパルラパルラッタッタラ」のフレーズ。中毒曲的ながら、何度聴いても空きることのない控えめな音量とペース。安心して聴けるだけのほぼ完成された、強烈な"クセ"を排除した歌唱。どの点をとっても、強烈な印象を聴き手に与えるだけの要素を備えている。最初に当楽曲を視聴したときには「なんということだ」とつぶやくことしかできなかった。

2.ライブラ (別れの天秤)
『物体X』書き下ろしの、星座シリーズの一曲。当楽曲のテーマは、天秤座である。楽曲の内容は、君と僕の"愛"と"逆行性の天秤(別れ)"を歌っている。君と僕は天秤の片方、そんな二人の出会いと別れの話。ナユタン星人の曲としては、得意な恋愛がテーマなのは他の曲とは変わりがないのだが、最後に別れるというのはあまり他にあまり例が無い。

楽曲は「ロケットサイダー」系統のロックの音作りだが、音色はややポジティブ(陽気)で爽やか。他の楽曲と比べるとやや異色。おそらくはVOCALOID(特に初音ミク)をメインに聴く層に対して、アプローチした曲では無いだろうかと思われる。

3.飛行少女 (ユーエンミー!)

大人になれない少女のちょっと背伸びした、ませた感じの"ヒコウ"曲。あえて誤解を恐れずに言うならば、"うっすくのっぺりとしたメロ"に対して、"ガッっと迫ってくるサビ"の対比が強烈なインパクトを残す楽曲。サビの部分の「ベイビーベイビー このまま飛んで…」でわっっと視界と世界が気持ちよく広がるような様子は、聴いたらもう忘れられない。

実際として、よくよく歌詞を聴けば、完全に夜のデートな楽曲。『物体X』収録曲では一番最後に、ニコニコ動画に投稿された当楽曲だが、堂々と再生数を伸ばし今日現在で60万再生。"この曲が一番好きだ!"という声もちらほら聴かれる程に聴けばハマる楽曲である。

もちろんメロも素晴らしいのだが、ここまで聴き手を掴んでいるのは、やはりサビの気持ちよさだ。ゆったりとしたメロから、一気に駆け上がるような高揚感、鮮烈さがバッっと弾ける「Wow!」などの掛け声、ドラマチックでロマティックな歌詞(「22時の境界 3000メートルで見下ろして / 安全圏からも抜け出して」)。

押さえつけられていた抑圧を開放するように、歌えよ"ヒコウ"少女。

4.パーフェクト生命 (あなたが欲しい)

「ドンドコドンドコ」と迫ってくる、鼓動のように駆け足な素晴らしいリズムが非常に中毒的な楽曲。ナユタン星人の楽曲では、今日現在、「エイリアンエイリアン」に次ぐ78万再生で、同様にミリオン(100万再生)が既に射程圏内にある。どんなに離れていても、匂いだけでも呼吸だけでも体温だけでも…何もなくてもと歌う少女。健気で一途で実直に、あなたを求める。そんな熱烈で熱い曲。

直前の飛行少女がアダルトよりならば、パーフェクト生命は少女よりの楽曲。少年少女的恋愛は、ナユタン星人の得意なテーマ(他の楽曲のテーマもそのほとんどが、少年少女の恋愛がテーマになっている)だが、他の楽曲と比べ、「飛行少女」と「パーフェクト生命」の二曲はいうなれば"ラブコール"の強い曲だ。

少女がサビで「なーーーい!」と叫ぶように歌うのが、スカッっとする他の曲がかなりストレートに歌っているのに対して、当楽曲は「フラストレーション」「アイソレーション」「デストラクション」と言った言葉遣いもなかなかひねりがある。また、ややゲーム的な趣がある。

5.エクストリーム空中戦 (交わって)
速さを追求した、エクストリームシリーズの一曲目。あまり早いようには感じないが、デッデッデッとよくよく聴けばテンポが早い。夜間の空中戦(愛の)…を歌っている曲。なるほど、エクストリームな楽曲だ。繰り返される「宙(ちゅう)」の響きも意味深である。

…これ以上はあえて何も言うまい。

6.水星のワルツ (忘れない)
題名通り、惑星である"水星"をテーマにしたゆったりとしたワルツ。語弊を恐れずに言うならば『物体X』の中では、一番地味で目立たない。前後の曲(「エクストリーム空中戦」/「パーフェクト生命」・「ハウトゥワープ」)が、"強烈"でかなり食われた印象があるが、「ライブラ」と同様、いつもとは違うナユタン星人が分かる充実した曲。おそらく、『物体X』で初音ミクが、一番初音ミクらしく歌っている。

『物体X』書き下ろし曲であり、ニコニコ動画や他の動画サイトには投稿されていない。この楽曲を聴くためだけにでも、入手する価値はあるかと思う。

7.ハウトゥワープ (HOW TO LOVE)

デンデンデケデケとした、楽しい楽曲。楽曲中にも特徴的な「デンッ!」とした効果音が使われており、ワチャワチャとまでは言わないが、ノリがよく、本当に楽しい一曲。ノリ・テンポ・速さ共に、『物体X』では一つ抜け出ており、個性ある楽曲群の中でもさらに特徴的。

当楽曲は「アンドロメダアンドロメダ」から続く曲と考えられる。「校舎の裏」「(感じたの)ギャラクシー」など共通するキーワードも見受けられる他、「わわわわわわ」「パッパッパッパッパッパ」と、一種の繰り返しのフレーズなどは、この二曲共通の特徴である。(例外として「飛行少女」にも繰り返しのフレーズがある)

「アンドロメダアンドロメダ」は、"コンタクト"の歌であったが、当楽曲は、"今会いに行く"歌である。一番は現在、ニ番は出会った日の回顧であり、「HOW TO WORP」「WARP TO WARP」と畳み掛けるサビは、彼女の思いを歌う。「HOW TO …」の繰り返しの最後だけは、「HOW TO LOVE」であり、"まだ知らない"で締めくくられる。この曲の続きが非常に気になる所である。

8.アトミック恋心 (恋の化学反応)
ボカロで覚える 中学理科への書き下ろし曲。アトミックのタイトル通り、元素が歌詞中に登場する。このようなタイアップ曲というのは、独自性を出しつつも目的適合性(今回の場合は、実際の学習用として実用に耐えうるか否か)を両立させるのが難しい事が多い。実際としてがっかりするような曲も多いのだが、当シリーズ(「ボカロで覚える中学○○」)は、学研が非常に力を入れているようで、しっかりとナユタン星人の楽曲として成立している。

メロ部分は理科知識の解説的な側面が強く(一番では元素名の読み上げと、原子の構成の説明)、それを踏まえてのサビ部分での楽曲のメッセージ性の二段構え。他の楽曲よりも、強くメロでの歌唱に加工が入っているような気がする。あえて全体的に抑えめにしてあり、ボカロらしいと言えばボカロらしい。「アトミックに恋してる」「記号化された世界から 連れ出してよ」等、詩的な言い回しの歌詞が魅力的。

9.ロケットサイダー (日陰へと)

一作目「アンドロメダアンドロメダ」で既に注目を浴びていた、ナユタン星人がニコニコ動画に投稿したニ作品目が当楽曲。サイダーの名前の通りの、爽やかさがあふれる、早めのテンポのロック。宇宙曲というよりは、終末系の退廃曲。楽曲の爽やかさとは裏腹に感じるのは、日陰や泡沫的な寂しさとチリチリとした切なさ。

まるでなにかを知らせるようなイントロから、若干寂しさを感じるメロへと移行していく。「拝啓」という言葉からはじまる歌は、聴き手へ向けたメッセージを伝える。この世界の片隅へとの逃避行の歌は、まるで、上へ上へと昇りその境界線を目指すかのような、サイダーの小さな炭酸の泡粒の一つのように美しい。それは、瞬間的で、淡く、目立たないような、そんな儚い美しさ。

10.ストラトステラ (サヨナラ)

ステラの輝きとストラトの焦がれる思いを歌う曲。"ステラ"は、星・惑星を意味する言葉だが、"ストラト"だけでは意味する言語が無い。当楽曲におしては、おそらくは"ストラトスフェアー(成層圏)"を略した言葉だと考えて間違いないだろう。当楽曲は、消え行く星「ステラ」とそれを見届ける「ストラト」の物語である。

"別れ"という意味ではライブラと同じはあるが、こちらは死別。光り輝くステラステラの美しき最後と、ストラトが抱く愛を歌った、一種のポップレクイエム的な終末曲。(「さいごにステラ 「君」がいたこと 確かめさせて」)「ロケットサイダー」と共に、切なく感傷的な2曲で実にアルバムを美しく締めくくっている。


TrackList
8曲盤 (2015年11月)
1.アンドロメダアンドロメダ 2.ライブラ 3.飛行少女 4.パーフェクト生命 5.水星のワルツ 6.ハウトゥワープ 7.ロケットサイダー 8.ストラトステラ

10曲盤 (2016年7月)
1.アンドロメダアンドロメダ 2.ライブラ 3.飛行少女 4.パーフェクト生命 [5.エクストリーム空中戦] 6.水星のワルツ 7.ハウトゥワープ [8.アトミック恋心] 9.ロケットサイダー 10.ストラトステラ


Discography
http://nayutalien.com/

Lyric
http://piapro.jp/t/-2fQ


試聴
Vimeo(メロンブックス) https://vimeo.com/173861934 (10曲XFD)
niconico http://www.nicovideo.jp/watch/sm27530441 (8曲XFD)
Youtube https://www.youtube.com/watch?v=r-ptFurkW-U (8曲XFD)


通販
10曲盤CD
booth https://nayutan.booth.pm/items/277127
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B01NH0ESNS
とらのあな http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/42/87/040030428783.html

8曲盤DL
booth https://nayutan.booth.pm/items/161620

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