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R3Magazine-Web アーティストレビュー

鋭く、淡く、そして美しく。ボカロP「萩原九厘」

投稿日:2017年8月4日 更新日:

こんばんは。この記事が当サイトでの初寄稿となる左手(@lefthand_for_it)です。ボカロPをやっています。

最初の記事は、評価されるべきと感じる身近な音楽として、僕が愛してやまないボカロP「萩原九厘(はぎわら くりん)」を紹介させていただく。彼の魅力は僕に言わせれば一つのレビュー記事に入り切るものではないが、それがこのページ内に収まるかどうかは僕の腕前次第というところだろう。

最新曲「現代疾病都市患者」

さて今回は萩原氏が先日投稿したばかりの最新曲「現代疾病都市患者」を軸に、彼の魅力を存分に語っていこうと思う。

冒頭から熱を帯びたギターロック。爆撃機のようなリズムセクションとノコギリのように鋭利なギターフレーズは彼の楽曲のアイデンティティのひとつだ。

歌詞は非常に暗いもので、歌の語り手(恐らく彼自身であると思われる)が罹患している精神的な病と、その治療のために服薬している様々な薬品が、初音ミクの今にも泣き出しそうな声音により次々と歌われてゆく。僕は名前すら聞いたことないものばかりだ。

自虐的であるとさえ感じる程に淡々と自身が置かれた状況を吐露し切ったあと、楽曲は暫く楽器のアンサンブルが続く。

終始鋭さを帯びたギターフレーズの応酬が、アプローチを変えながら楽曲を力強く押し進めてゆく。歌の世界観を引き立てる緻密に練られたフレージングながらも、決して無理をしていない自然なパッセージは彼の持つセンスの賜物である。

そしてラストサビ、1回目のサビを踏襲しながらの最後の1フレーズ。

「生きてたい 蔑まれたっていい 存在の証明を」

ここで僕は震えた。
彼が五分弱の楽曲に詰め込んだ「生きたい」というたった一つの強いメッセージは、彼を取り巻く世界の輪郭をドラマティックに描写しながら、力強く真っ直ぐリスナーにぶつけられる。

そして淡々としているように思えたそれまでの歌詞までもが、最後の1文により一気に人間性を増すのである。

萩原九厘楽曲のテーマと"人間性"

萩原氏の楽曲は一貫して一つのテーマを持っている。それは「自分という存在と、自分が愛する今は亡き少女の存在」であり、十数曲を跨いで描かれる激動の青春は、曲数が増える毎にそのメッセージに重さを付与させていく。

彼の描く歌詞は、非常に文学的な様相を呈してはいるものの、その言葉の節々には感情のままに吐き散らかされたような危うさも孕んでいて、言い知れない淡さが滲み出ている。劇的で儚い青春を力の限り叫ぶようなその歌詞は、彼自身が弾くギターの絶妙なグルーヴ感と相まって、美しい人間性を醸し出す。

その人間性に、僕はめっぽう惚れ込んでいるのである。これは他の誰の曲を聴いても感じる事が出来ない魅力だ。

おわりに

少し感情的な文章になってしまったが、この文章を読んでくれた皆様には、それを踏まえて是非とも彼の曲を聴いて欲しい。僕のこの興奮が理解してもらえると思う。
では。

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